リスクの中にチャンスがあるお酒のネット販売で全国へ
榎商店(東かがわ市)は、1969年にお酒・たばこ・贈答品の販売で創業しました。
2015年からは酒類のインターネット販売を開始。
ウイスキーやブランデー、リキュールなど国内では珍しいものを中心に約1,000種類を販売している。
ウェブサイトの制作スタッフを社内に抱え、お酒にちなんだ漫画やアニメーションなどサイトのオリジナルコンテンツを充実させている。
3代目社長の秋元康範さん(41)は大阪府出身。
アパレル販売などを経て、結婚後に妻の母が営む榎商店に入った。
「このまちの温かさがあったから、商売を続けてこられた。都会じゃなくてもビジネスチャンスはいっぱいある」
と話す。
販売量は西日本トップクラスというが、ネット販売が軌道に乗るまで、挑戦と失敗を繰り返してきた。
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入社した2002年ごろ、売上の柱になっていたのはたばこの販売と飲食店などへのお酒の業務用販売だった。
しかし大口取引の中止で、たばこの売上が激減。
社長を引き継ぎ、業務量する酒類の営業・仕入れ・配達を妻と従業員との3人でこなした。
「どん底までいったら後は上がるだけなので、業績がいいときよりも悪い時に社長になりたかった」
と振り返る。
業務用の販売先を増やすために、徳島・香川のまだ取引のない飲食店に足しげく通った。
「ひたすら”飲みニケーション”です」。
そうすると、新店オープンの際に注文をくれるなど引き合いが増えていった。
店舗販売にも力を入れようとビールや焼酎を何十種類と並べたり、自動販売機の設置や運送業など新しい事業も始めてみたりした。
「最初のうちは良いんですが、長続きしませんでした」
もっとできることはないかと始めたのが、ネット販売だった。
まずはECサイト「アマゾン」に出品。
タブレットを片時も離さず、アマゾンでは何が売れているのかを夜じゅう見ていた。
良いと思う商品は利益が少なくても仕入れた。
売れたら仕入れの数を増やせるため、次は少し安く仕入れられる。
それを積み重ねた。
希少なお酒を売ると反響が大きく、アマゾンでの売れ行きが好調だったため「楽天市場」にも出店。
「朝から晩まで出荷作業に追われるようになってしまって……」。
商品は倉庫に保管し、倉庫から購入者へ発送するようにした。
システム開発に投資し、ネット販売の受注・発送を自動化。
現在、全国10ヶ所に物流用の委託倉庫がある。
購入者に「不公平感」を感じさせないため、送料は全国一律で無料だ。
業務用に販売しているのは、主に瓶や樽のビールだが、ネット販売の商品は洋酒だ。
店頭販売で、賞味期限が短い商品の在庫を抱えることの大変さを経験していた。
賞味期限が長いもの、色の変化や味の劣化があまりないものにしようと探してたどり着いたのが、ウイスキーやブランデーなどの輸入品。
珍しさもあって、売上はどんどん伸びた。「Yaoo!ショッピング」「Womwa(ワウマ)」にも出店した。
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「世界には日本で知られていないお酒がまだまだあります。これからも新しいものを販売していきたい」。
秋元さんはスタッフにも挑戦を促す。
「100人中99人に批判されても1人がいいと思ってくれたらそれあうちの特徴になる。リスクの中にチャンスが眠っていると思います」